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骨粗しょう症③

骨粗しょう症シリーズ3回目は、治療について解説いたします。

シリーズ②で検査を行った結果も踏まえ、おおむね下の図のように考えて治療開始するかどうかを決定します。

         骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015より

まとめると、骨粗しょう症に起因するような骨折を起こしたことがある場合や、骨密度が若い人と比べて70%未満の場合は治療開始が推奨されています。

とくに、下記のような状態の場合は、次の骨折の発生を防ぐために早急に治療を行うことが望ましいとされています。

骨粗しょう症の治療のための薬は数多くありますが、大きく2つに分けられ、骨をつくる働きを促進させるもの(骨形成促進薬)と、骨を壊す働きを抑えるもの(骨吸収抑制薬)があります。

さらに、飲み薬と注射製剤に分けられ、まとめると下の図のようになります。

注射製剤は飲み薬よりも効果は高いですが、使える期間に制限がある場合があることと、金額が高いという特徴があります。ただ、内服薬より効果発現が強く早いため、前述した骨折危険性の高い状態であれば注射製剤の方が望ましいと考えられます。

最後に、副作用についてです。主に骨吸収抑制薬で関連があるとされる顎骨壊死というものがあります。これは歯茎とあごの骨が壊死してしまう重大な病気ですが、骨粗しょう症の薬によって顎骨壊死になるわけではなく、抜歯などの処置が行われたときに生じる顎骨壊死を生じる可能性が上昇する‘‘かもしれない‘‘と言われています。顎骨壊死との関連が発表された当初は問題視されましたがはっきりとした関連はわかっておらず、結局は口の中を清潔に保つことが重要とされています。最近は歯科の先生も以前ほど気にされなくなっている印象です。

あとは、どの薬でも血液中のカルシウムの濃度が変化します。高すぎても低すぎても体にとってよくない時々血液検査でチェックする必要があります。

骨粗しょう症治療の理想は、早期発見・早期治療によって骨折を未然に防ぐことです。ある程度の年齢になったら、骨密度検査を受けることをご検討ください。

2025年02月18日
野球肘〜全身の機能をチェック〜

こんにちは。理学療法士の谷口です。

今回は野球肘で来院した選手に行う、肘以外のチェックポイントについて紹介します。

『投球動作』で大切なことは、腕を強く振るだけではありません。

いかに効率良く全身を使ってボールに力を伝えていくか、というのが重要です。

これまでの研究でも、全身を上手に使って投げることで怪我のリスクを減らし、より高いパフォーマンスを発揮できることが分かっています。

逆に使い方が悪いと肘や肩に負担のかかる投げ方になってしまい、怪我のリスクやパフォーマンスの低下を招いてしまいます。

当院では、野球肘や野球肩により治療が必要な場合は、無理に投げさせずに投球休止の期間を設けることが多いです。

そこで、投球休止の期間に、肘や肩と同じくらい『全身機能の改善』に重点を置いてアプローチします。

今回は全身機能のチェックポイントの例をいくつか紹介させてもらいます。

自分でできるチェックポイントも多いので、ぜひ活用してみてください!

《全身のチェックポイントの例↓↓》

①片脚バランス

②股関節内転・外転筋力

③ランジ動作・片脚スクワット動作

④開脚

⑤股関節内旋・外旋

今回は股関節に重点を置いたチェックポイントを紹介しました。

投げる時の重心移動や回旋の力を伝えるために有効なポイントなので、ぜひ一緒に取り組んでみましょう!

2025年02月15日
骨粗しょう症②

今回は骨粗しょう症第2弾です。検査についてご説明します。

骨粗しょう症とは、「骨の量」が少なくなることと、「骨の質」が悪くなることで強度が弱くなってしまう状態です。「骨の質」を測る検査はありませんが、「骨の量」を骨密度を測定して評価します。

骨密度を測定するにはいくつかの方法がありますが、一般的にはDXA(デキサ)法という放射線を使った検査を行います。測る場所としては、主には腰椎(腰の背骨)や大腿骨(太ももの骨)の付け根で測定します。いずれも骨粗しょう症になると骨折が起こりやすい場所になっています。

測った骨密度を、YAM(Young Adult Mean)値という数値を使って評価します。YAM値は、20歳から44歳という若い年齢での骨密度の平均値で、ここから自分の骨密度がどれくらい低下しているかを計算します。

下の絵が実際の検査結果です。

腰椎では若年成人と比較し97%ですが、大腿骨では67%という数値になっています。腰椎は年齢による変化が起きやすく正確な骨密度の測定が難しい場合が多いので、このように大腿骨も併せて測定し、骨粗しょう症と診断します。

また、血液検査で骨の代謝マーカーを測る場合もあります。骨形成(骨をつくる)のマーカー(P1NPなど)と骨吸収(骨を壊す)のマーカー(TRACP-5bなど)の2種類があり、特に後者が高いと代謝のバランスが崩れて骨が弱くなりやすい状態と考えられます。

そのほか、レントゲンで特に背骨の骨折が起こった跡がないかを確認します。骨密度の数値が良くてもいつの間にか骨折が起こっていることがあり、この場合も骨粗しょう症と考え治療を検討します。

以上が骨粗しょう症の検査となります。次回は骨粗しょう症の治療について解説したいと思います。

おまけ

2008年にWHO(世界保健機関)が発表したFRAXというツールがあります。これは、40歳以上を対象に、今後10年に骨折するリスクを確立で計算できるものです。年齢とあてはまる条件を選択することで簡便に結果がでますので、よろしければ下記サイトで試してみてください。

https://frax.shef.ac.uk/FRAX/tool.aspx?lang=jp

15%を超える数値が出た場合は、実際に骨密度を測定したほうがよいと考えられます。

2025年02月07日
骨粗しょう症①

今回から骨粗しょう症について解説していきます。

みなさまも「骨粗しょう症」という言葉を、耳にしたり目にしたりしたことがあると思いますが、なんとなく骨が弱くなる病気?というイメージでしょうか。

ある病気の結果として骨が弱くなる場合と、加齢による変化として骨が弱くなる場合があり、骨粗しょう症とは、【骨が弱くなる病気】ではなく【骨が弱くなった状態】といえます

骨粗しょう症自体では自覚症状がないため困ることはないですが、骨折しやすくなってしまうことが問題です。

骨折すると痛みや変形のため身体の活動性が低下してしまい、場合によっては寿命にも関わります。さらに動けなくなると介護が必要となり、金銭的な負担や家族の負担が増えるため、社会的にも問題となりえます。

骨折しやすい場所は決まっていて、ほとんどは背骨と股関節(太ももの付け根)です。その他で多い場所は手首と肩です。

ではどうして骨は弱くなるのでしょうか?

一般的に多い、閉経後骨粗しょう症について説明します。骨というものは、生まれてから一生、作って(骨形成)、壊して(骨吸収)、を交互に繰り返すことによって骨を新鮮な状態に保っています。骨を作る細胞を「骨芽(こつが)細胞」、骨を壊す細胞を「破骨(はこつ)細胞」といいます。若いうちはこの2つの細胞が協調してバランスよく骨を作り変えるのですが、女性の場合は特に閉経後にホルモンバランスが変化する影響で、破骨細胞のほうがより多く働く環境になってしまい、骨の代謝バランスが崩れて骨が弱くなってしまいます。

カルシウムをたくさんとればよいですか?と患者様からご質問をいただくことがあります。残念ながら、小魚を食べたり牛乳を飲んだりしても骨が強くなることは難しいと考えられます。理由は、骨の中の細胞の働きのアンバランスによって起こっていることですので、カルシウムを多く取り入れても骨をバランスよく作る助けにならないからです。いくら材料をたくさん運んでも、工場がうまく働かないければいい品物が作れないのと同じです、と患者様には説明するようにしています。

年齢を重ねるにつれて筋力の低下とともに転びやすくなることもあって、高齢の方は骨折を起こしやすい状態と言えます。前述したように、骨折を起こすと本人のみでなくご家族にもその後の生活に大きな影響を生じる可能性があります。そのため高齢化が著しい現代においては、骨粗しょう症は放置せずにしっかり治療を行うことが重要であると考えられます。

次回は、骨粗しょう症に対する検査について解説したいと思います

2025年02月01日