今回は関節の腫れの原因の2つ目、化膿性関節炎について解説します。
「化膿性(かのうせい)」と頭につく病名はいくつかありますが、いずれも細菌感染によって起こった状態のことをいいます。
関節の中で細菌が増殖し、強い炎症を生じた状態を「化膿性関節炎」といいます。体の別の場所から血流にのって関節に入り込むことや、ケガや手術などで皮膚の細菌が関節の中に入ることで生じる場合があります。また、ヒザの関節はヒアルロン酸やステロイド剤を注射することが多い関節ですので、ごくまれですが注射による感染が起こってしまうことがあります。また、乳幼児、小児では血流をたどって股関節に化膿を起こすことがあります。
我々整形外科医は、ケガによるものではない赤く腫れた関節を見ると少し緊張します。関節の中は通常無菌状態で、細菌への抵抗力が弱い環境ですので診断がついたら可能な限り早く手術で関節の中を洗って細菌を除去する必要があります。つまり緊急治療を要する状態ということですので、慎重に診断しなければなりません。手術が行われた後は、しばらく抗生剤の投与が行われます。
余談ですが、人工関節手術を行う場合、感染対策のため下の写真のように宇宙服のようなもので全身を覆い、通常の手術よりも清潔度を高めて行います。
前回解説した痛風・偽痛風とは見た目では区別がつきませんが、細菌がはいるようなキズや注射後などでなければ、感染の可能性は低いと考えられます。痛風・偽痛風ではステロイド剤の注射がよく効きますが、感染を生じている場合にはそれを悪化させてしまう可能性があるため、どちらか迷う場合はステロイド剤はうたないほうが無難だといえます。
また、感染は病気、薬、また加齢などによって免疫力が低下した状態でおこりやすくなりますので、体調が悪いときはヒザなどの関節への注射は控えたほうがよいでしょう。
以上、化膿性関節炎について解説しました。万が一起こった場合は緊急を要する状態ですので、関節が腫れて痛みがでた場合には必ず整形外科クリニックを受診するようにしてください。
院長