今回は、野球肘について解説いたします。一度に話をすると長くなるので、何回かに分けたいと思います。
野球肘とは、繰り返しボールを投げる動作で生じる肘関節の障害です。とくに成長期である小学生から中学生にかけて起こり、ある調査では病院を受診した野球少年の症状のうち、小学生で約80%、中学生で約55%が肘の痛みであったという結果がでています。
野球肘では痛みは投球動作の際に起こり、日常生活における動作ではあまり問題になることはありません。野球ボールを投げる動作というのは、ヒトの体、特に肩関節、肘関節にとっては不自然で強いストレスが生じる動きなのです。投球を繰り返すことによって傷害が蓄積し、ついには痛みが出現します。
では、肘にはどのようなことが起こっているのでしょうか。大きく分けると、内側と外側に分けられ、それぞれ起こっていることが違います。
肘関節は、上側(肩側)は上腕骨、下側(手側)は尺骨と橈骨という骨で構成されています。
外側では骨同士(上腕骨と橈骨)がぶつかるような動きとなり、内側では骨(上腕骨と尺骨)が離れる方向に動きます。この動きがストレスとなり、繰り返されることによって肘を傷めてしまいます。外側では、上腕骨側の軟骨の損傷を生じ、内側では上腕骨の成長軟骨や靭帯を損傷します。とくに外側の軟骨損傷は進んでしまうと将来にも障害が残ってしまうので、しっかりした対処が必要となります。
外側での軟骨の損傷を「離断性骨軟骨炎」、内側を「成長軟骨損傷、裂離骨折、内側側副靭帯損傷(状態によって変わります)」という診断名になります。
離断性骨軟骨炎は、初期の段階であれば90%以上で手術をしなくても治りますが、終末期だと手術が必要になります。早期診断、早期治療が重要ですが、初期段階の半分は無症状です。とくにピッチャーとして頑張っている場合、症状がなくても定期的に検診を受けていただいたほうが良いと考えられます。
内側の傷害の場合は、基本的に投球中止、安静で回復しますが、写真のような骨折を生じている場合はしばらく関節を動かさないように固定をする必要があります。
野球肘において最も重要なことは、当たり前ですが予防することです。そのために、やはり投球数制限と正しい投球フォームを習得することが必要です。正しい、肘を傷めにくいフォームを身に着けるためには、筋力や関節の柔軟性が重要になります。小学~中学生はとくに筋力がまだ弱く、成長に従って関節が固くなっていきますので投球フォームが乱れてストレスがかかりがちです。
次の投稿では、理学療法士よりリハビリなどを解説してもらいます。